花売りの老婆
友人が知人(Aさん)から直接聞いた話。
戦跡で有名な糸満市のひめゆりの塔での話。
ここは戦跡巡りで有名な場所であり、NAHAマラソンのコース上でもあることから、マラソンの参加者が途中で手を合わせたりもする場所。
入口の受付では献花用の花も売られている。
Aさんはツーリング好きで、昔ここを通った時に、ひめゆりの塔の前の歩道で金属製のバケツに入れた献花用の花を売っている老婆を見掛けた。
花の値札も貼られていなかったが、場所が場所だけに、こういう物売りもいるんだと、その時はさほど気にも留めなかった。
しかし時は流れ20年後、同じようにツーリング中にそこでまた同じ花売りの老婆を見掛け、さすがに20年もの年月が流れているのに、同じ老婆が花を売っているのはおかしいと気付き、バイクを停め、ひめゆりの塔のスタッフに、こんな老婆がいるかと尋ねたが、そんな人は知らないと。
入口で花を売っているのだから、その側の道端で同じように花を売られていたら営業妨害なので、もし本当に存在するなら知らないはずはなさそう。
それを聞いてAさんは、"あぁ、そういう存在の人だったんだな"と納得したそう。
これを私が友人から聞いたのが先月。
聞いたその場で友人Yさんに電話してみた。
Yさんは、50年以上前からひめゆりの塔から僅か150mの場所に住んでいる超地元民。
しかし、そんなYさんでもそういう老婆は見たことも聞いたことも無いと。
ユタ(沖縄の霊媒師的存在)の中には、糸満には近寄れないと言う人もいる程、激戦地だった場所。
戦時中に命を落とした住民や兵隊の霊なら定番だが、献花用の花売りの老婆の霊とは、怖いというよりなんとも感慨深いものがある。
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